「勉強したくない」と言っている生徒が、突然勉強を始めるちょっとしたコツ

目次

①勉強が嫌いな不登校の子供たち

②まずは、本人が興味のあることについて、こちらが教えてもらう!

③そして、本人をとことん褒めて自己肯定感を高める!

④勉強が苦手な生徒が勉強に取り組めるようになった実践例

⑤講師と生徒の信頼関係こそが、学習支援の根幹

①勉強が嫌いな不登校の子供たち

フリースクールや適応指導教室には

「勉強なんかしたくない!」

という生徒は割とたくさんいます。

中には、勉強はしなくてよい、ただ家以外の場所に通えればよい、という居場所的な機能で開かれている場所もありますが、逆に勉強が重視されている場所もあります。

生徒たちはそもそも学校の授業に興味を持てず、その結果、学校に適応できなくて来ている方が多いため、勉強をしなくてはならない環境に入れられることに対して、非常に拒否反応を示すことがあります。

考えてみれば、そんなん当たり前!

嫌な思いをしたからその場を避けているのに、同じように勉強を強制させられる場所に来たいわけがないではないですか。

でもね、私は思います。

「学習に興味のない子なんかいない。」

って。

子供のころの知的好奇心は、半端でないはず。

色んな世の中のことを、どんどん知りたいはず。

でも、学校ってところは、それを「個人の興味に関係なく、画一的に一方的に学習を強制してくる」んですよね。

興味が湧かないことを強制されたって、やりたくないに決まってるじゃないですか。

他の興味のある遊びを認めてくれつつならまだしも、「あれもダメ、これもダメ。」と、やりたいことを否定される中で、やりたくないことだけをやらされる。

地獄でしょう。

大人だって、やりたくない仕事であれば転職する人が多いのだから、子供だってやりたくないことをやらない選択をする権利はあるはずなんですよね。

だから、私は「やりたくないこと」の強制なんかしません。

それでも、「学習支援」そのものはとても大切なことだと思うので、要は「いかに、子供がやりたくなるか。」を考えることが本当の学習支援なのではないかと考えているのです。

②まずは、本人が興味のあることについて、こちらが教えてもらう!

先生や親の話を全く聞かないで、話の途中でどこかに行ってしまうような生徒さんはたくさんいます。

特に、ASD(自閉症スペクトラム障害)傾向にある生徒さんは、自分の興味のない話にはまるで無関心であり、もろにその気持ちを態度に表してきます。

その時点で、先生の中には「話を聞く気がないなら、帰れ!」と言ってしまう方もいらっしゃいます。

人の話に興味を持たないなんて、失礼なことですよね。

なんでここに来ているの?来たくないなら来なくていいよ、と思ってしまうのは無理のないことだと思うのです。

でもね、私は自分が小学生のころから常に思っていたのですけど、

「相手が興味を持てない話を無理に続けようとするなよ。」

ってことなんです。

興味のないことを聞かせられる生徒もかわいそうだし、自分の話に興味を持ってもらえない先生だってかわいそうじゃないですか。

そもそも、先生って仕事は、お金をもらって人に教える仕事をしているのです。

それに対して、生徒の方は「行かないといけないから、行かされている。」状況にいるわけです。

お互いのために、お互いがその時間を楽しく過ごすことができる話を先生がお仕事としてすることが、双方にとってハッピーになることだと思いませんか???

特に、これは個別授業や小集団授業に向いている方法なのですが、

私はまず、目の前の生徒の「好きなこと」を探します。

突然、色々聞き出すのは逆効果ですよ。

初対面の生徒に関しては、最初は世間話を始めます。

「〇〇さん、おはようございます!毎日、寒いですね!休みの日はどこかに行くことはありますか?私は今度名古屋に行くんですよ!実は出身地は名古屋なんです!」

などなど、当たり障りのない会話をしつつ、自己開示をさりげなくしていきます。

また、生徒の服装や持ち物などを観察し、

「ピン止め可愛いですね~サン〇オですか?私、たまにピュー◇ランドに行くんですよ!プリンちゃんのキーホルダー買いました!」

などなど、相手と自分の共通点を探すのです。

大体、共通点は3個あると、相手の人は自分に心を許してくれるので、5分くらいの会話の中で、3個の共通点を見つけるように意識的に心がけています。

「寒いね~」

「はい、寒いです」

の共感だけでも、共通点は成立します。

少し、場の雰囲気が温まってくると、次はユーチューブや漫画の話を持ち出します。

最近の生徒は、たいていは「ユーチューブ」のワードで目が光りますね。

全く会話をしない生徒さんが、突然スイッチが入ったように自分の好きなユーチューブチャンネルのことを語り始める瞬間に、私は本当にやりがいを感じます。

そこで「ユーチューブは最高の学習教材ですよね。」と相槌を打ちながら伝えます。

すると、

「分かります?ユーチューブでいろいろ世の中のこと学んでるんですよ!」

「そんなこと言ってくれた人、先生が初めてです!」

と、言ってくれます。

その時点で、完全に生徒は私のことを「味方」だと思ってくれるので、その後のサポートはとてもしやすいのです。

相手が自分の好きなことを、目を輝かせながら話している中で、私が歴史の話や理科の話を織り交ぜていくと

「へぇ~!そんな風につながっているのですか!」

と、リスペクトされることは非常に多いです。

ユーチューブでなくても、漫画の「金カム(ゴールデンカムイ)」や「銀魂」の話が出てきたら、そのまま歴史の話に持っていくことは非常に楽。

実は、私自身がそれらの漫画を読んだことがあるわけではないのですが、生徒が目を輝かせながら「日露戦争が~」と話したり「新選組が~」と話したりすることを私自身が相手の話に興味を持って教えてもらうことで、何となく推察し、「私が好きな日露戦争の漫画は『日露戦争物語』って言って秋山真之って人が面白くてさ。」とか「私の時代の新選組の漫画だったら『るろうに剣心』や『風光る』だね。」と、こちらの好きなことも伝えていくのです。

後はお互いが共通点を探しながら、お互いが学びあう楽しい時間が続いていきます。

「自分の話を聴いてもらいたかったら、まずは相手の話を聴くこと」

ビジネスの鉄板でもあり、教育の鉄板でもあり、ひいては「人間関係の鉄板」だと思っています。

生徒と先生の関係性は、「人間関係」そのものです。

まずは、お互いに「向上しあうことができる」場を作り出すことが、先生の役割なのではないでしょうか?

③そして、本人をとことん褒めて自己肯定感を高める!

生徒の心のガードさえ解いてしまえば、もうこっちのもの。

後は、生徒を褒めて褒めて褒めまくることです。

しかし、生徒も、ただ根拠もなく褒めてくる大人に対しては警戒します。

私だって、若い頃は褒められることが嫌いでした。

「どうせ、心にもないことを言っているんでしょ・・・」

「自分が好かれたいから言ってるだけでしょ・・・気持ち悪い・・・」

と、自分をやたら褒めてくる大人に対して、逆に嫌悪感を持っていました。

実はそれは「自己肯定感が低い」からこそ出る感情であり、「自分なんかいいところは一つもない」「この世に存在してはいけない存在なんだ」と心の奥で自分を否定しているからこそ、人からの「称賛」を素直に受け止めることができないのですよね。

「来るだけでえらいよ!」というのは、少し信頼関係ができてから。

最初は、生徒との会話の中で、本人が「これは褒めてほしい」と思っていることを探します。

例えば、「料理は好きです。母と一緒にご飯作ることもあるので。」と生徒が話したら、

「すごいじゃん!お手伝いしてるんだね!なかなか、お母さんのお手伝いできる人っていないんだよ!」

と、具体的なことに対して当たり障りなく褒めるのです。

母親の手伝いをする生徒は、承認欲求から行っていることが多いので、その行動そのものを褒めると喜ぶことは多いです。

「お母さん、すごく助かってるんじゃないかな。」

と伝えて、相手の反応をみます。

喜んでいたら、他の些細な行動に対しても褒めていけばいい。

不登校の生徒は、皆が当たり前にできることを「頑張ってやっとできている」ことが多いので、その「頑張っている」ことに焦点を当てるといいですね。

反応が薄ければ、反応を引き出すまで違う話題で相手の「褒めてほしいこと」「頑張っていること」を探していきます。

一つ一つの行動に対して、少しずつ生徒が自信を持っていくことで、次の行動につながっていくのです。

④勉強が苦手な生徒が勉強に取り組めるようになった実践例

全く宿題に取り組むことが出来なかったEさんの事例

Eさんは、まったく学習に興味がなく、宿題をやってくることが出来ませんでした。授業(個別指導)に対しても常に上の空で、授業中に突然フラフラ立ち上がって他の生徒に話しかけに行くこともありました。

そこで、まずは本人な好きなことを探すために、Do you like soccer?Do you like baseball?Do you like trains?など、英語の授業の中で本人に質問することを続けました。その中で、Eさんは新幹線が好きだということが分かったので、その次の授業では新幹線の英語アナウンス文をスライドに載せて授業をしてみたのです。

私も、ここまで効果が出るとは思いませんでした。なんと、いつもノートを自分から書こうとしたがらない生徒が、みずからノートを取り始め、しかも「違う駅バージョンでも書いていいですか?」と、同じ文を何度も何度も書き始めたのです。そして、自分から質問をする。「bound  for って、何ですか?(指を指しながら)」もう、涙出そうでしたね!「分からないことを、調べるのが勉強なんだよ。」と伝えると、自分で調べ始める生徒。「2つの単語を繋げて1つの意味になる言葉を熟語っていうんだよ。」と補足を入れると「へぇ~!」と嬉しそうに聞いてくれるのです。

そして、最後に「今日、身についたことは?」と問いかけると「bound for ~に向けて」です!と、ちゃんと覚えてくれているんです!

興味のあることに勉強を絡めるとすごいですね!

しかも、それまで宿題がしんどくて結局できなくて、授業前には暗い表情をしていたのに、その次の授業では全部範囲をやってきて、また嬉しそうに見せてくれるんですよね。もちろん、宿題そのものも工夫して、生徒さんの興味に合わせました。(他の先生から引き継いだ生徒さんです。)個別指導って、生徒に合わせて授業を作るから「個別」なんですよ。生徒の「好き」を引き出すことが出来れば、授業も必ずうまくいきます!

そんなことを、改めて実感させてくれた例でした。

突然、算数の公式を暗唱して問題を解き始めたYさんの事例

小学生のYさん。教室に最初来た時は、まったく興味のない様子で「来たくない」と言った生徒です。

初回面談で、かなり本気を出して、本人の「興味」を探しました。興味がないことは完全スルーなので、こちらも全力投球です。

「勉強はしたくない!」「ここには来ない!」とかたくなな態度を崩そうとしませんでしたが、「そりゃあさ、問題集をひたすら進めろって言われても嫌でしょ。たださ、算数って、もともとは日常生活に役立てるものじゃん。例えば、5980円のゲームが7割引きになっている場合、おこずかいの範囲で買えるか知りたかったら、割合とか知っておく必要があるわけじゃん?」と伝えると、5980×(1-0.7)とか、いきなり目の前の書類に書き始めるんですよね。「え!?すごくない」と伝えると「簡単だから。」と。隣にいたお母さまもビックリです。「え!?今まで算数やっているところなんて家でなかったじゃん!できるの!?」と、初めてその能力を知った様子。「じゃあさ、このトイレットペーパーの断面積(ドーナツの部分)とか、どうやって計算する?」と、実際にトイレットペーパーを持ってくると、「円の面積は半径×半径×3.14で、まずは大きい方の面積を求めてそれから小さい方の面積を引く」と口頭で答えた後、実際に紙に式を書いて計算を始めます。

「今、やっていること、勉強じゃん???」

「あ、確かに・・・」

「最初はこんな感じでいいんだって!習慣をつけることが大事なの!まずはできることからやっていこうよ!」

と伝えると、

「じゃあ、来てもいいよ。」

と笑顔で言ってくれました。

おそらく、それまでに何らかの教材やユーチューブなどで「知っていた」ことを、アウトプットする場がなかったのでしょう。アウトプットをしてみて、それを認められたから、「やってみてもいいかな」になったのだと考えます。

生徒は、大人が思う以上に優秀です。できないことに目を向けるのではなく、できることを「引き出して」そこに目を向けましょうよ。そうすれば、生徒は能動的に「やりたい」「ここに来たい」となるのですから。

私自身が生徒の潜在能力の高さにびっくりした事例でした。

⑤講師と生徒の信頼関係こそが、学習支援の根幹

このように、学習支援の仕事は本当に面白いのです。

想像以上の「やる気」「興味」を生徒からどんどん引き出すことが出来るのです。

そのために必要なのが「生徒と先生の間の信頼関係」になります。

生徒との間に信頼関係を構築するコツをまとめます。

生徒との信頼関係を構築するコツまとめ

1 当たり障りのない日常会話と自己開示

2 共通点を3つ探す

3 生徒の「好きなこと」を教えてもらう

4 生徒をとことん褒める(よいところに焦点を充てる)

これが出来れば、どんな生徒であっても会話をすることや学習サポートをすることが楽しくなります。

生徒が自分の話に興味を持たなくて、学習サポートの仕事がつらい先生方や、生徒の保護者の方に、ぜひ実践してほしいなと思って記事を書かせていただきました!

補足ですが、私が猫ミームに興味を持ったのは、生徒から「教えてもらったから」です!

生徒からたくさんの興味深いことを教えてもらえるので、とても楽しい先生ライフを送ることができています!

(一時期、授業も猫ミームで作っていました!)