「蟹工船」を授業でやろうとしたらこうなった
暗記だけではつまらない!
特に社会は前後にあるストーリーを知って衝撃を受けないと、記憶になかなか定着しないものです。
私はもともと、近代史や現代社会がめちゃめちゃ苦手でした。
(今でも現代社会はあまり詳しくないです)
それでも、歴史は得意なんですよね。
何でかなって思ったら、
私はもともと読書が好きで、小さい頃からたくさんの日本の古典文学作品や外国の物語を読んで来て、その時代背景に興味を持ったからなんです。
(古典だと、源氏物語、とりかえばや物語、宇治拾遺集、御伽草子、古事記、平家物語、伊勢物語、東海道中膝栗毛など、
外国の物語だと、小公女、秘密の花園、王子とこじき、ギリシャ神話などなどなど)
大人になってからは、仕事以外で本を読むのは疲れるので、もっぱら漫画になっている文学作品を読んでいます。
その中で、「蟹工船」を漫画で読む機会があり、「資本主義や共産主義って、こんな背景があるんだ!」って、やっと近代史に興味を持つことができたんですよ。
別に、私に特別な思想があるわけではありませんが、「そういう思想や背景があるから、世の中はこう動いた」って知るよいきっかけになると思ったんですよね。
「蟹工船」が。
それで、その漫画をもとに、youtube動画を作ってみたんです。
その動画をもとに、
「君たちはどう働くか」
というテーマにして、通信高校サポート校で実際に授業を行ってみました!
とっかかりは、「君たちが社長になったとして、自分の利益を上げるためにどうする?」という問い。
「商品の質を上げる」「広告を出す」などの意見が出た後に、
「人件費を抑えるというのも、よく行われている方法なんだよね。」と伝えると、「ブラックってやつですね!」とのレスポンスが。
その、究極のブラックを描写している文学作品があるよ!との流れで「蟹工船」のあらすじを紙芝居形式に説明させていただきました。
「やばい!」「えぐい!」「無理!」とざわつく生徒たち。
「やっぱり、人と繋がることとか、知識を得ることって、自分の身を守るんじゃないのかな。」
そういう結論に持っていった後に、資本主義の仕組みや共産主義の説明をサラッとしました。
そして、今の日本も「資本主義である」と説明。
「搾取(さくしゅ)って言葉は覚えて欲しいのよ。」と、単語の解説も。
なぜ、このような方向性に持っていったかというと、私自身が高卒で知り合いの家に居候していた時に
「一日14時間労働、休みなし、給料ほぼなし」
の生活を送っていたからです。
当時の私は、全く自信のない人間でした。
学校の勉強が少しはできることが取り柄だったのに、勉強が全く関係ない「販売」「肉体労働」をする仕事をして生きるしかなくて、しかもその勉強に対する自信も失っていて、知り合いが好意で雇ってくれてるんだからどんな環境でも感謝して働き続けるしかないと思っていたのです。
もちろん、いろんな勉強や経験をさせて頂いたので、感謝しかないのですが、やはり客観的に考えると、少し「人権」というところは無視されていたかなと思います。
そこの社長からは「言葉」で縛り付けられていました。
「あなたは、ここで私のもとでないと働けないのよ。」
「小さい頃から勉強していい高校出てるのに、大学に行けなかったという程度の知能しかないのよ。他所でやっていけるわけないじゃない。」
などなどです。
自信がなかった私は、その言葉を本当だと思い込んで、「価値のない自分は、生活させていただけるだけでもありがたいんだから。」と、ひたすらほぼ給料なしの状況で働き続けていました。
部屋とベッドを与えられていた時期もありましたが、倉庫で寝ていた時期もあります。
クーラーも暖房も入れてもらえず、お風呂は2日に一回までとされていました。
週末になるとお小遣いをもらえるのですが、「ほほちゃん、お金は皆のために使うものよ。」と言われて、そのお金で従業員全員のピザを頼まされたりしました。
自由になるお金も時間も、全くなかったのです。
「蟹工船」の労働者の環境は、その頃の私と少し重なりました。
私は、その中でも使えるお金を必死にひねり出し、少しずつ資格の本を買って読み続けました。
また、高校までの勉強も、参考書を買い直して復習し続けました。
その様子を見て、社長や他の従業員は「バカなんじゃないの?」と言って笑っていました。
「勉強するなら、もっと現実に即したことしなよ。」
でもね、私が勉強してた中には「電気工事士」「家電製品アドバイザー」や「宅建」などもあって、それが後々仕事に活かせることができたのです。
電気工事士、物理の知識が必要です。
また、英語も必死で学んで、外国人のお客をたくさん掴むことにも成功したんです。
勉強する人をバカにするなんて、ナンセンスです。本当に。
勉強を続けて仕事に活かせることが分かった自分は、社長の言うことに反発を抱くようになり、結局その環境から脱げ出すことになりました。
勉強は自分を救うんですよ。
知識は人を助けるんですよ。
蟹工船でも、「労働者が団結することを知って、自分たちの権利を守ることができた。」のです。
ここが共感して、私はどうしてもこの授業をやりたくて、実際にやって、
結果、通信高校サポート校では大成功でした。
反響が大きく、その後振り返り授業をした時も、「印象に残っている」人がほとんどでした。
歴史って、やっぱりストーリーと共感が、理解するために大事なことなんですね!
さて、その授業で味をしめた私が他の学校で同じ授業をしようとしたところ、まさかの「反対意見」を他の先生方から頂いたのです。
実際に、上司にはスライドを見せて企画そのものは通ったのですが、何故、他の先生方がそこまで「反対」するのか最初は分かりませんでした。
「思想が偏るから心配」と言われて、「そう言うご意見もあるのだな。」と思いました。
それでも、蟹工船は高校の教科書にも乗っている代表的な文学作品の一つです。
一般教養の1つとして、知っておいた方が良い作品に一つです。
私が対象としているのは「勉強にもともと興味がない子」「授業が嫌いな子」です。
自分の経験を踏まえて文学作品を紹介して、生徒たちに「搾取されない人生を考えてもらうこと」「勉強の大切さ」を知ってもらうことで、よりよい未来を築くサポートをしています。
人間の行動の動機付けをする時に、私たち「心理専門職」は、「感情に訴える」「未来を考える」ことに焦点を置きます。
そして、勉強を教える講師として、私は「インパクトの強い授業」をします。
インパクトが強ければ強いほど、長期記憶に残りやすいからです。
授業がきっかけになって、その時代に興味を持つことができれば、それでいいんだと思うのです。
教科書に乗っていることを、専門家がタラタラと話すだけの授業で、インパクトに残りますか?
テストで暗記しろ、ワークやってこいと言われて、楽しいですか???
勉強は楽しくやるものです。
学校の勉強に興味を持てずに不登校になっている生徒に、私は「勉強の意義」「学ぶ楽しさ」を教えたい。
それが私のライフワークなのです。